神戸連続児童殺傷事件の犯人・元少年Aのベストセラー手記【絶歌(ぜっか)】。
絶歌の内容は非常に詳細に、元少年Aの事件当時の詳細と現在をつづっている。
ベストセラーとなった絶歌の印税は、一般人からすると多額であり、これに対して様々な物議を呼んだ。
ネタバレを踏まえた上で感想などをまとめてみよう。
絶歌の内容とは?
元少年Aの手記・絶歌は太田出版から出版された294ページに渡るものだ。
2部構成であり、第1部は元少年Aが幼かったころから、何故、神戸連続児童殺傷事件を起こし、少年院に移送された後までが記されている。
第2部は少年院生活を経て、社会復帰を果たし、2015年に至るまでの経緯を記している。
2部構成の手記は全27の章で構成されており、紛れもなく元少年Aの目線から書かれたもの。
内容は元少年Aが自身の哲学を織り交ぜながら、自分自身をコントロール出来なくなっていた。
弱い存在の命を元少年Aが奪えることに快感を示し、それが止まらなくなった心境を克明に描き記している。
特に印象的な一文は
蟻やゴキブリを殺しても誰も怒らへんのに、人間の命だけが尊いんですか?
人間を殺すのがそないに悪いことなんですか?
事件を起こした当時の元少年Aの犯罪理念のような理屈が、この一文に込められている気がする。
第2部は少年院から出た後の社会復帰するまでの過程と、現実の厳しさを痛感したかの様な様々な模様を記している。
犯罪者の視点から書かれた犯罪ノンフィクション小説というのは、非常に少ないもので、これが大ベストセラーとなったわけだ。
絶歌のネタバレとなる、要するに何を言いたかったのかということは後述して、絶歌を出版した結果の一つ・印税について触れてみよう。
元少年Aの絶歌の印税について
元少年Aや絶歌の出版に携わった関係者が、結局、絶歌の印税はどの位のものになったのかは明かしてはいない。
だが、1500円で初版は10万部も出版されて、当時、2015年話題に乗じてプラス5万部が増刷されたことを報道メディアは明かしている。
そこから類推すると、元少年Aが手にした印税は少なくとも2000万円以上と思われる。
この印税は被害者遺族に支払われるのかと思いきや、元少年Aはこの印税の使い道を明かしてはいない。
おそらくは自分自身の資金にしていると思われる。
かつて、元少年Aの父が書いた【『少年A』この子を生んで】は、こちらもベストセラーとなった手記だが、この印税は被害者遺族に渡されている。
これに加えて、当時の住んでいた家屋敷を全て売り払って、既に被害者遺族に賠償金を支払っているのだ。
だからなのだろうか・・・。
当の犯行の当事者である元少年Aの絶歌の多額の印税は、被害者遺族に宛てられていないのだろう。
元少年Aは絶歌の出版後、自身のホームページを立ち上げたが、絶歌の印税を賠償金にあてたという記述は無かった。
もしも、充てていたのならば、確実にそれを発表していたはずだからだ。
絶歌のネタバレ・・・要するに?
元少年Aは絶歌の最後に被害者遺族に対する気持ちを述べて、最後を締めくくっている。
少年院を退院してからの11年間は苦労をして、周りの人間に支えられながらも生きてきたが、社会の中で人並み生活していくことが出来なかったと書いている。
そして、この本(絶歌)を書く以外に、現在の社会の中で生きられる居場所を、見つけることが出来なかったとつづっている。
要するにこれは貧困に耐え切れなくなったということにも思える。
確かに日本の少年犯罪史上、紛れもなくトップクラスの極悪犯罪と言える神戸連続児童殺傷事件の犯人が発するモノには、多くの注目が集まる。
注目が集まるということは、そこには金儲けのタネが無数に転がることになるのは、誰でも分かることだ。
だからこそ、被害者遺族の気持ちを無視?してでも、その貧困から脱却する為に、敢えて事件を掘り返すことを許してくださいと言っている様にも感じる。
あくまで個人的な感想だが、どこまで身勝手な理屈であろうか・・・。
おわりに
元少年Aの育った環境というのは、実は一般的な中流家庭。
子供が育つには決して不自由のない生活がある環境であったのだ。
現実を生きていく上で、お金の心配をすることは、当然、元少年Aには無かった。
だからこそ、現実がわかっていないために、常軌を逸したことを考えて自分自身の欲望を正当化して行動に起こすことが出来た。
しかし、社会人となり、一般人の我々が日々、日常的に味わっている多くの苦労を強いられる。
自分は特別な存在であると思っているからこそ、事件を掘り起こして絶歌を書いて、それが売れた。
ここまでは良かったものの、その後のホームページ運営はうまく行かなかった。
金がなくなれば、自分自身の自由が抑制された状態になってしまうから、彼にとってはあのホームページ運営はビジネスの一環であったのだろうと感じる。
しかし、それはうまく行かなかったのは、現在の状況を見ればお分かりだろう。
それまで自分は特別であるという証を立てた気になっていた心境をうち砕くものだった。
結局は糾弾されて、いまは昔の勢いがなくなり、逃げるように今は再び社会の藻屑となって目立たずに生きようとしている。
それは元少年Aの家族が現在、メディアに取り上げられているの涙の告白をみれば明らかだ。
これほどの怪物であっても、やはり金の力にはかなわなかったということである。
金の力に勝てなかった・・・と、いうことは、単なる矮小でみじめな存在であったということの自己証明は出来たということだ。